ゴキブリが出た

乾かして取り込んだばかりの子供のお昼寝タオルを見ていると、もうすぐ小学校に行ってしまう娘のことを考えて胸が詰まった。

毎週毎週洗われて少しずつ色あせ、厚みもだんだん減っていったタオルケット。
保育園のベッドにフィットするようにゴムが縫い付けてあり、長女の卒園と共に退役してももはや普通のタオルには戻れない、まさに長女の幼少期に命を捧げたタオルケット。

乳児クラスのときにだけ使っていたお手拭きが引退し、幼児クラスのお昼寝タオルも現役を退く。それに連れて子供は大きく強く成長し、少しずつだがそれでも確実に親からの自立の道を歩んでいる。子供の親への依存と執着はちょっとずつタオルに吸い込まれ、気付いたら子供らは親のことは忘れて自分の足で歩んでゆくのだろう。

まるでトイストーリーのおもちゃのようではないか。タオルがではない、我々親がだ。 いつしか子供はおもちゃから巣立ち、親もまたその現実を受け入れて子供から巣立たねばならないのだ。

子供との出会いはあまりにも破壊的で不可逆に僕の人生を変えてしまった。もうそれ以前の暮らしがどうだったかすらよく覚えていない程だ。 それほどまでに愛情を注いだ対象がだんだん我々の存在を必要としなくなるという事実を受け入れるのは難しいことだ。しかしそれは正しいことだし、確実に起こることなのだ。かつての自分がそうだったのだから。

とか何とか言ってたらゴキブリが出た。終わった、我が心の安寧は子供の自立よりも早く失われた。 このマンスョンを買って5年。初めてゴキカブリにお目にかかった。なに?住んでるの?実は住んでたの?娘と共に成長していたの?

恐怖で背筋が凍るとはこのことだ。私は机の上に飛び乗ってそのまま動けない。本当の恐怖に触れると、人間は声すら出ないのだ。 奴はどこだ。一旦部屋の対角に行った。するとメラメラと闘争心が湧き上がってきた。子供たちを守らなくてはならない(論理の飛躍)

まず奴の退路を断つために逃げられる扉をすべて閉じた。それから然るべき決戦の地、五丈原(風呂場)に誘導するために岸田メルのポーズで新聞紙を掻き鳴らす。 しめた!うまく五丈原に陽動した。そのまま一旦風呂場の扉を閉める。

すぐに我が家の論理ストレージであるところのセブンイレブンで高エネルギーポジトロンライフルキンチョール型を調達して戻る。 敵は渭水を背にして陣取っているが、背を向けた一瞬を捉えて一気に噴射した!ここで引くわけにはいかないのだ。やるかやられるかなのだ…許してくれ張郃

いずこよりいまし荒ぶる神とは存ぜぬも、かしこみかしこみ申す。この地に塚を築きあなたの御魂をお祭りします。怨みを忘れ静まりたまえ🙏