JAISTに入学してひと月が経ちました

JAISTに入学してようやくひと月が経ちました1
ひと言でいうとJAISTは最高です。働きながら大学院生になった感想を残しておこうと思います。

JAISTは最高

JAISTは最高です。僕は東京サテライトの学生なので以下特に「石川本校」と断りのない限り東京社会人コースのことだと思ってください。

学生のレベルとモチベーションが高い

社会人コースはその名の通り社会人しかいません。働きながら勉強しようという連中なので当然非常に高いモチベーションです。
グループワークをするとみんなつばを撒き散らしながら白熱の議論をしますし、発表するとなるとマイクを奪い合って登壇します。

また、どういうわけかすでに高い教育を受けて世界を股にかけて活躍している第一線のビジネスパーソンがずらりと揃っています。JAISTは入試の際に「自分の出身大学、指導教官、勤め先などを一切明かしてはならない」というルールがあります。これは面接官にバイアスを与えないためですが、それにも関わらず彼らがきっちり勝ち残って入学しているのはとても不思議に感じます。
とにかく、そのおかげで授業は引き締まって高レベルに展開され、議論は実経験を反映した実りの多いものになり、みな自分の社会人生活を通じて得た知識や学びをシェアするのに惜しみがありません。これは大変な刺激です。

JAISTは甘くない

JAIST浅野哲夫学長の入学の挨拶の言葉を引用すると「偏差値一辺倒の大学教育から一線を画した多様な人材を受け入れる」大学です。このため、確か数年前から「線形代数」や「英語」の筆記試験を廃止し、いまは小論文と面接一本に絞られました2。これによってこれまでは入学できなかった数学/英語が苦手な生徒も多く入学したことと思います。ただし当然のことですが、入学したからといって修了できるとは限らないのです。

JAISTの授業はレベルが高く、単位の認定は厳しいです。これは複数の教授と元卒業生の同僚の証言から確かなことです。「門戸は開いてやるから実力で這い出てこいよ」ということです。例えば僕が履修している「情報解析学特論」という講義は、初回の授業で「今日はいきなりで心の準備もできてないだろうから、高校・大学の復習のつもりで聞いてくださいね」と始まった内容すら、僕にはついていくのが必死でした。

あらためて、高校まででやるような数学はごくごく基本的なパズルのピースであって、大学や大学院の授業ではそれらを使って応用的な内容を学ぶのです。院試でわざわざ問わないから君たちが当然にそれを用意してくるのですよ、さもなくば単位は与えませんよということです。とにかく必死に食らいついていくしかありません。

それから内容以上にキツイのがその過密スケジュールです。JAIST東京では情報科学系の授業は金曜夜と土日にだけ開講されるのですが、これで平日フルに勉強している石川本校と同じ到達点を目指すので、土日100分 * 2コマずつで2ヶ月で期末試験まで完了というような厳しい日程になります。土日連続開講なので予習復習の期間もほとんどなく、試験勉強も充分にできません。履修がたとえ4半期1教科でも平日夜は予習復習で必死です。授業はほとんどその確認ぐらいの余裕がないと到底ついていけません。

正直すでに働きながら2年での修了は現実的ではないので3年計画を立てています。JAISTは長期履修制度を使って2年分の学費で3年通うことができるのでこれもありがたい点ではあります。

コンピュータサイエンスって何なんスかね

僕はアルゴリズムとデータ構造、グラフ理論、計算複雑性理論などに関心が高く、ちょいちょい自習していたので正直に言うと大学院でコンピュータサイエンスを学ぶと言ってもこれまでの復習かそれを補強するものになるだろうと高をくくっていましたが、これは大変に甘い目論見であることを知りました。コンピュータサイエンスの裾野は自分が知っているよりも遥かに広く、そのごく一分野を掘るだけでもやっとだとよくわかりました。

シラバスを眺めるだけでも

と楽しみな授業ばかりです。

いまはBluetoothメッシュネットワーク、非同期分散データベース、信号解析(とくに音声データ)などに関心が高まっているので、この3年で研究につながる授業を幅広く取れたらなぁと思っています。JAISTに在学中の先輩方、これから入学を考えているみなさんとぜひ交流したいです。

JAISTは大学を出てなくても入れるよ

そういえば意外にご存じない方が多かったのでここで触れておくと、JAISTは必ずしも大学の学部を卒業していなくても出願できます。
詳しくは「学生募集要項」を見て欲しいですが、社会人経験や取得資格を「学部卒業相当」と見なし、受験資格を与えるための事前審査があり、概ね5年以上の勤務経験があれば受験できることが多いようです。なんでもチャレンジしてみるものです!応援しています!

おわりに

そういえば「34歳からの数学博士」のさのたけとさんのVoicyに呼んでいただけたので、さのさんと堤修一さんと一緒に大学教育やらについて話しました。
さのさんも堤さんも理系修士で、堤さんは情報系なのですが、修了された立場から必ずしもコンピュータサイエンスが必要かどうか分からないといった生の意見が収録されています。もし良かったらぜひ聴いてみてください!ほいじゃあの!

voicy.jp


  1. 指導教官とは入学前からかれこれ半年も研究テーマについて議論したり面談をしてもらったりしていたのでまだひと月か!という感想が大きいです。

  2. その代わり面接は論文発表会さながらの緊迫感で、自分の研究計画を他の論文やデータを交えながら発表して自分が入学を希望する学科の教授4人に囲まれてボコボコにされるという厳しい場です。