社会人大学院で得たもの、失ったもの

こんにちは。本エントリは 社会人学生 Advent Calendar 2019 の第7日目です!

このエントリでは、社会人大学院で得たもの、失ったものについて思うところを思いつくままに書こうと思います。 特に、失ったものについては正直に書いておく必要があるでしょう。

自己紹介

僕のブログでは社会人大学院のことをたびたび書いており今更感もあるのですが、このアドベントカレンダー経由で本エントリを読んでくださる方も当然いらっしゃると考えるので、コンテキストの共有のために改めて自己紹介をさせてください。

白山と申します。36歳会社員です。妻と2歳6歳の女児を育てながらフルタイム会社員をしています。
現在は北陸先端科学技術大学院大学(通称JAIST)の修士課程で情報科学を専攻しています。元々いわゆる文系出身ですが、かれこれ10年以上もIT産業の片隅で禄を食みつづけておりました。去年〜今年の春にかけて1年と少し米国にいた経験から、大学院に進む決断をしました。その辺りの詳細は次の記事に寄稿しましたので良かったら読んでいただけたら幸いです。

engineer-lab.findy-code.io

また、特にJAISTに関してはこれらのエントリにまとめてあります。JAISTに興味のお有りの方はご参照ください。

fushiroyama.hatenablog.com

fushiroyama.hatenablog.com

社会人大学院で得たもの

それでは早速、良い面から書いていきましょう!

学位

すみません、まだまったく修了していないし目処も立っていないですが、これは書かないわけにはいかないですよね。学位。学位記。修士(博士)号。欲しい。

学位って何なんでしょうか。
前出のエントリには偉そうに「今ここに無い価値を創造する力を養うため(キリッ」みたいなことを書きましたし「米国の就労ビザが求める要件として関連学位が必要」とも書きました。しかしですね、力を養いたいなら別に大学院に行かなくたって夜中にシコシコ勉強すればいいんですよね。就労ビザだって、実のところ僕はIT業界で実務経験が12年ぐらいあるので、仮にBachelor of Artsでも弁護士の腕次第でH-1Bに申請できる可能性が高いです。

じゃあ何かって、ソシャゲのメダルみたいなものではないでしょうか。究極的には自己満足です。2〜3年間痛みに耐えてよく頑張った!感動した!それでいいじゃありませんか。その上で、就職にもうな重の山椒ほどの効果が上乗せできるなら上出来です。

よく言われるらしいですが、学部は参加賞、修士は努力賞だそうです。では博士は何賞なのか。 僕の指導教官が言っておりましたが、

「博士はね、いまも新規性は大事ではあるけど、最近では『自分で考えて』『計画を立てて』『表に出した』ということを『やれる子ですよ!』という認定に近いと思いますよ😌」

だそうです。なるほど認定証。欲しい!

モチベーションの高い同志

これは社会人大学院固有かもしれません。社会人大学院は非常にモチベーションが高い同級生がたくさんいます。 働きながら苦労してまで大学院に行こうという人たちなので、これは当然のことです。

20年前に修士を修了したけど、子供が独立したし役職定年で時間が出来たので博士課程に来ているお父さん。 教育学修士をすでに持っているけど、自分の幅を広げるためにさらに別の専攻に進んだ小学校の先生。 そして僕のように専攻も違うし学部しか出ていないけどキャリアアップのために修士にきてる人。 実に多種多様です。

企業の研究員も看護師さんもお医者さんも大学の先生まで同級生にいました。みんな色んな思いで大学に来ています。この情熱を分けてもらえるだけで通っている甲斐があります。

学力や能力

じゃあ大学院はやりがいや自己満足だけかというと、そんな訳ないですね。学力が普通に身につきます。 というか学力がないと単位が取れません。修了できません…

他のエントリにも書きましたが、JAIST情報科学は甘くないです。これだけ長いことIT産業にいて、しかも僕は競技プログラミングや数学、UNIXオペレーティングシステムなどの自習をかれこれ結構長いことやってきたのでまあ何とかなるかな?と高をくくっていたのですが、あんまり何とかなっていません。

勉強している内容は難しく、しかもその前提となる学部レベルの線形代数微積分学の勉強もまったく足りておらず、普通に座っているだけでは全然勉強についていけません。毎晩必死に勉強しています。自分の脳が、20年ぶりに呼吸をしているのを感じます。これが成長…!

他にも得たものはたくさんあると思うんですけど、あまり長くなっても読んでもらえないのでこの辺で。

社会人大学院で失ったもの

ここからは重く苦しい現実をお伝えしたいと思います。

子供との時間

JAIST(社会人コース)の情報科学は、金曜の夜と土日に開講しています。僕の場合は必修と修士論文を除けば、だいたい20単位取らないといけません。 JAISTは4学期制なので、1学期あたり2.5単位とれば2年で(単位としては)足りる計算です。3ヶ月ごとに1〜2講義です。

これがそれほど甘くありません。当初、この計算をしてみて「土日の1日ずつ差し出せば行ける!」と喜んだのですが、実際に蓋を開けてみると大学の授業はそんなに都合良くは開講しないので、授業によっては2コマずつ土日両方みたいな感じになります。 土日両方なので家族で旅行にもいけませんし、そもそも連日開講される授業の予習復習で土日も朝3時に起きて3時間資料に目を通すような生活がずっと続いています。

妻にも「大学院に行くのはいいよ・・・でも、『今』なの?」とため息まじりに言われました。何も言えない。

余暇

余暇などというものは何もなくなりました。1学期にたった1講義でも、予習復習で他のことを考えている余裕がありません。

そもそも僕は理系学部を出ていません。そうすると彼らが当然知っている線形代数や大学の微積分学をちゃんと身に付けていません。 ちょうど2年前ぐらいに機械学習が流行り始めて、僕も高校微積をひとりでコツコツやってたんですが、割と冗談抜きで大学の微積はレベルが違って、授業の板書を見返したときに式がなにをやってるか分からず半泣きで大学積分のテキストを開くというようなことを毎夜しています。

これはJAIST固有なのか理系固有なのかわかりませんが、出席点などというものはないので、基本的にテストができないと落第します。留年します。このプレッシャーは僕は未経験でした。酒を飲んでる余裕すらないんです。酒を飲むと朝起きて勉強ができない。勉強ができないと単位が取れない。 仕事終わりや休日に講義を受けて、みんなで楽しく議論してレポートを書いて、2〜3年で帽子🎓かぶって卒業なんて、とんでもない。そんな甘いものではなかった。

修士論文が始まると、おそらく行き帰りの電車の中ですらそれをずっと考える日々が始まると思います。大丈夫なのか不安です。

まとめ

本当に「今」大学院なのかというは未だに自問自答します。家族の信頼を揺るがしてまでやることなのかと。 僕は結構海外出張があるのですが、そこから逆算して合間を縫って取れる講義をとっているので、休日は大学に行ってていないし講義が少し途切れるタイミングで待っていたかのように一週間仕事で海外に行くような感じになるので、家族は「パパは休日家にいない人」みたいな感じになりつつあります。

結婚して、子供ができて、僕は一貫して定時で帰って家族と一緒に過ごすという日々を過ごしてきたので、これには忸怩たる思いもあります。 ただね、桜木花道じゃないですが、僕は「今」なんですよ…30代でエンジニアとしても脂の乗った「今」さらなる力をつけて飛翔したい…40歳までのあと4年の投資がその先の20年を左右すると思っているのです。それまで家族とのバランスを取りながらも前に進むしかない。ボーッと生きてたら人生終わってしまう!

また来年のアドベントカレンダーで進捗を共有したいと思います。また会うその日まで、じゃあの!