何年も痔に苦しんでいる

はじめに断っておくと、これはあまり気持ちのいいトピックではないので読みたくない人は俺がみかんのうたのイントロリフを弾いているうちにブラウザを閉じて欲しい。

俺の魂の叫びだー!愛媛の心をー!
(お前たちにーっ!)
愛媛の!
\みかーーん!/\みかーーん!/\みかーーん!/
チーチードコドコドコドコ
デレッデーレッ デレッデーレッ デレッデーレッ ズクズクズクデー
デレッデーレッ デレッデーレッ デレッデーレッ ズクズクズクデー
デレッデーレッ デレッデーレッ デレッデーレッ ズクズクズクデー
デレッデーレッ デレッデーレッ デレッデーレッ ズクズクズクデー
デッデッデーデデデ デッデッデーデデデ(来んかい!)

始めてよろしいか?

わたしと痔

もう何年も痔に苦しんでいる。おそらく初めて自覚症状に気付いたのはもう10年以上前で、便をすると時々おしりの痛みを感じるようになり、たまに便に混ざる血を観測するようになった。7-8年前から便をするとほとんど毎回おしりが痛く、これはいわゆる痔であると認識し始めた。5-6年前から、排便に伴うあまりのおしりの痛みにトイレに行くことが恐怖になり始め、これはいよいよいかんということで病院に行った。

痔と診断されて

初めて私を診断してくださったのは非常に若い先生だった。先生は私の目をまっすぐ見て、

「私は大腸肛門病・消化器内科の専門医です。今からお聞きすることは診察の参考にするものであって、いかなる性的指向や偏見に基づくものでもありません。また、あなたはこの質問に回答する義務はありません。あなたは日常的に排便以外の用途で肛門を使用しますか?*1

とお聞きになった。私は「もっぱら排便です」と答え、そのあと金属を使った直腸の診断を受けた。先生は「裂肛(いわゆる切れ痔)です」と仰って、軟膏を処方してくださった。一旦対症療法となった。

長い戦いの始まり

長い戦いが始まった。最初の自覚症状から考えると、この時点で5年近く経過していたことになる。 通常「切れ痔」の場合は、

  1. 何らかの理由で直腸などに傷がつく
  2. 硬い便や、排便時の肛門括約筋の運動でその傷が傷みつづける

といった経緯で定着してしまうようだ。通常、粘膜は回復力が高く、労っていると自然に治癒するらしいのだが、裂肛が治らない人は「被ダメージ > 回復速度」という状況にあるらしい。これは単純ながら非常に重要な式なので覚えて欲しい。つまり、

  • 回復速度を高める…よく寝る、軟膏を塗る、など
  • 被ダメージを減らす…便を柔らかくする、ダメージ物質がおしりを通過する回数を減らす、など

が基本方針となるわけだ。典型的に処方される薬としては

  • 酸化マグネシウム…便が水分を多く含み柔らかくなる(被ダメージ減少)
  • トリベノシド・リドカイン軟膏…おしりの出血や傷みを和らげる軟膏・座薬(回復アイテム)
  • ロキソプロフェン…補助的に、炎症と傷みを抑える錠剤

などが挙げられる。これらを使って前出の式を回復傾向に向けるしかない。

薬の一例

また、これに合わせて生活習慣の改善も指示された。 普段から水をよく飲み、食物繊維をたっぷり摂ることで酸化マグネシウムを飲まなくても便を柔らかくしておしりへのダメージを減らすことを指導された。それから、寝不足は免疫力とおしりの回復力を下げることから良くないし、飲酒は充血や下痢の契機となりやすいのでいっそ完全断酒することを提案された。確かに大量に酒を飲むとお腹の調子を崩すことがあったので何となく納得感はあったが、便秘による硬い便のみならず、下痢もおしりに良くないというのは意外だった。

断酒、これは大きな決断である。私はタバコを吸わない。博打もしない。女遊びもしない。パソコン1台あれば永久に時間が潰せる村のソフトウェア開発者だ。2週間に1回、サイゼリヤでビールとデカンタワインというセンベロハッピーセットを頼むぐらいの幸福は許されてもよさそうなものだ。このうえ酒まで奪われるのか、あんまりだ… しかしこの際痔は治してしまいたい。愚直な私は実際に2018-2020のほとんど丸2年間完全に1滴のアルコールすら断ったのである。それでも痔は治らなかった。

セカンドオピニオン

気付けば毎月専門医の診断を受けながら薬を使う積極的治療を開始してから5-6年、初めの自覚症状から10年が経とうとしていた。

内服薬を飲み座薬を欠かさなければ、排便することに恐怖を覚えるほどの痛みはなくなった。それでも少し仕事が忙しくて寝不足になったりすると、すぐに痔は鎮圧しても鎮圧しても蜂起する匈奴のように勢力を盛り返しては私のおしりの中原を攻め続けた。 そのうちわたしは自分の症状に疑問を持ち始めた。こんなに治らないものだろうか?もしかしたらもっとずっと深刻な病なのではあるまいか?主治医の先生にお聞きしても、
「ん?痔ですよ」
「うーん、一進一退ですねえ」
「手術?切る?何をですか?これは『ただれ』ですから切ることはできません」
という感じで、何も変わらない日々が続いた。

私はついに勇気を出し、別の肛門専門医のセカンドオピニオンを仰ぐことにした。聞きたいことは次の通りだ。

  1. 単刀直入に、ガンなどのより深刻な病ではないか?
  2. 裂肛との診断だが、座薬を入れるときにイボを感じる。内痔核(いぼ痔)ではないのか?
  3. いぼ痔なら手術できないか?

新しい先生はいかにも職人という風体だった。痩せてひょろっと背が高く、短く刈り上げられたごま塩頭と眉間に深く刻まれた気難しそうなシワは畳職人を思わせた。 入念に診察を終えた先生はこう告げた。

「裂肛(切れ痔)です。あなたが内痔核(いぼ痔)だと感じていたものは見張りイボと言って、酷くなった裂肛の存在を知らせるものです。あなたは裂肛が悪化し慢性化し、切れた部分の周りが隆起しています。これが『引っかかり』になって排便時にまたダメージが蓄積します。基本的には保存療法をおすすめします」

見張りイボ

私はガンなどの深刻な病ではなかったことに安堵し、そして基本的にはセカンドオピニオンは主治医の見解を支持するものであり、保存療法つまり積極的に手術などを行うのではなくて症状の緩和・改善を目指すしかない―つまり現状維持が提案されたことに深く失望した。と、ここで先生が続ける。

「…なんですが、積極的治療にも関わらずもう10年も改善していないのでしたっけ?うーん、なら、切ってみてもいいかもしれないね。つまり、裂肛とその周りの隆起(見張りイボ)を含めてまるっと切ってつなげる。するとそこら一帯は平らになって引っかかりがなくなり、回復に転じるかも知れない。その際に肛門括約筋の一部も切って中を"ゆるく"する。しかしこれは効果を確約できない。切ってみるまで分からない。リスクを取るかよく考えてください。」

切れ痔を切る

ケツ論

結局、どうするか結論は出ていない。その日はいつものように酸化マグネシウムと座薬をもらった。 専門医2人が同じ見解である以上、私は疑いなく重度の裂肛なのであろう。そしてその二人共が基本的には保存療法で合意している以上、私としてはこれ以上強いステップを踏み出しづらい。ただ、これから一生ロキソニンと軟膏で痛みをごまかしながら酸化マグネシウムを飲み続けるのかと思うと、正直気が滅入らないといえば嘘になる。私としては次のアクションを取ることにした。

  1. 2021年からまた飲酒を再開していたが、再び断酒にチャレンジする
  2. 食べる量を減らす
  3. スタンディングデスクで仕事をする

特に2に関しては薄々思っていたことだが、私は多分食べる量が多すぎる。食べる量が多いとどうなるか?排便回数が増える=被弾回数が増える。 私は元々食べることが大好きで、気を抜くとまるで競走馬のように簡単に15kgぐらい太ってしまう。4年スパンぐらいで±15kg、つまり最大で30kgぐらいの体重差がある。現状はなんと90kgオーバー…*2 せめて70kg台に戻してもバチは当たらないであろう。

また、3に関しては職業プログラマであり筋金入りの㋔㋟㋗であることも手伝って、一日のうち10時間は座りっぱなしである。リープチェアというそれなりに良い椅子に座っているが、それでもおしりへのダメージは避けられないようだ。折しも引っ越しを予定しており、少しちゃんとした書斎が手に入る予定なので、この機会にスタンディングデスクを導入して日中は立って仕事をしてみてもいいかも知れない。

最後に、このようなエントリを書いたのは、ひとつには痔というあまりおおっぴらには語りたくないことを明らかにすることで「あ、みんなも悩んでたんだ」というのを可視化したいためだ。また、もしかしたらインターネットの叡智からよいアドバイスを貰えるかも知れないという期待もある。無論、私のおしりを直接診た専門医以上の知見がインターネットから舞い降りてくることはあり得ないだろうが、ちょっとした生活の知恵はぜひいただきたい。

本日は失礼こかせていただきました。

*1:先生が何と仰ったか正確には記憶していない。しかしながらプロとしての矜持と配慮を同時に感じる大変立派な質問方法だったことは確かだ。

*2:身長は坂田銀時や煉獄杏寿郎と同じぐらい